私は、両親とも癌で亡くしました。母は25年前に乳がんで亡くなりました。私は一人っ子なので、母が入院した時は、子供を連れて看病に通いました。その当時、今の様に本人への告知は積極的にはされていませんでしたが、情報の沢山溢れている社会に於いて、判らないはずはありませんでした。判った時は、全身に転移していて腹水も貯まっていました。末期ではありましたが、新しい抗がん剤があると聞き、投与して貰いましたが、その副作用は言葉では言い表せない物がありました。今では緩和ケアなど充実していますが、あの当時はそんな物は無く、とても辛い思いをさせてしまいました。母は父に、私には病気の事は心配するから黙っておくように、と頼んだそうです。しかし、母を見ればどんな状態かわかります。でも母の私への思い遣りを台無しにしたくなかったので、最期まで知らない振りをしていました。ですから、母はいつも笑顔で私を迎えてくれましたが、看護婦さんの前では乳がんの抗がん剤の副作用で抜けた髪の毛を見て泣いていたそうです。そんな母も1年半の闘病生活の末亡くなりましたが、私は、亡くなった時より、闘病中の母を見ているのが辛かったので、亡くなった時、やっと楽になれたね、と言葉をかけました。